魂‐soul‐
沙希は再婚しなかったので、十五年間母子家庭である。

正直なところ、湊は父親の顔を覚えていなかった。

写真を見てもあまりピンとこない。外見にも似ている要素がなかった。

だからかもしれない、このとき真実を沙希に追求しなかったのは。

沙希曰く中身が似ているそうだ。

父は関西弁を喋っていたと聞いて、湊は沙希が喋る標準語ではなく関西弁を使った。
 
「飯~」
 
「はいはい」
 
テーブルに着いた湊の前に手作りハンバーグが出された。

健康にうるさい沙希は野菜も欠かさない。

薄型液晶テレビの電源を入れるとニュースがやっていた。
 
『相次いでいる人格変化。一体何が原因なのでしょうか』
 
上品そうな女性アナウンサーが、赤い口紅を塗った唇を動かした。
 
『今年の四月から全国で確認されているだけでも、すでに六十九件。昨年は七十件にまでのぼりました。半年で昨年の被害者数を追い越しそうです。被害者は老若男女様々で、共通点はやはり大阪市内にある森の中に入ったとのことです。』
 
噛むことなく読み終えたアナウンサーは、眉を寄せた。
 
『本当に怖いですね。くれぐれも森には近づかないようにお願いします』
 
「怖いわね~」
 
沙希がアナウンサーと同じ表情で言った。
 
「原因不明かぁ」
 
湊はハンバーグをナイフで切り、フォークで刺して口へ入れた。

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