怪しい羊と迷えるオオカミ'S【完】


鏡の前で化粧水をつけながら


「お父さん、お母さん、ほんと申し訳ない」


そう呟くのも毎度のこと。



映っているのは、きめ細かい白い肌に粒良な瞳。


綺麗な鼻筋が通り 愛らしい唇。


少しくせのある柔らかく長い髪も今は濡れてまっすぐに。



この誰もが羨むほどの可愛らしい姿が美祈の本来の姿。


だが、美祈にとっては重い鎧のような外せない鎖のようなそんな思いに溢れる。



小さい頃から可愛い可愛いと言われて育つ。


自分ではそう思わなくても回りがそう植え込む。



思春期の迎える頃は、異性にもトキメクお年頃。


「A組の小林くんが呼んでるよ」


「また告白じゃない」


「美祈モテるよね」


「知らない人だよ…どうしよう」



彼氏という響きに確かに憧れた。


それでも、スキな人と付き合うもので知らない人とは付き合えない。


付き合って知っていけばいいともいうが美祈にはそれが出来なかった。



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