怪しい羊と迷えるオオカミ'S【完】
「どうぞ」
一番先に美祈からビールをつがれ順番にグラスに注がれると
カチンッとわけのわからない集いが始まった。
基本中の基本とも思われる自己紹介が始まると真っ先に名乗ったのはマコ。
良くも悪しくも知り尽くしている自分たちより瑛太の話に時間をとりたいからだ。
合コンで手慣れた様子で銀行勤めだと話したあとでしっかりと銀行の宣伝。
これもご愛敬。
コタもまた、簡潔で面白く自分を話す。
開発部に配属になったが自分の開発したものが商品になるのはあと5億年ぐらい先だなんていうあたりは、その寿命の長さからやっぱり座敷童だと瑛太は吹き出した。
そして瑛太の番になると
フリーのカメラマンだということ。正確にはフォトグラファーと説明した。
なぜフリーを続けるかということや、今まで撮った写真の話や現地の話。
それから、大学の時の親友と2人で住んでいるという事を座敷童たちに聞かせた。
人見知りなんて言葉に無縁の瑛太と世渡り上手なマコと人懐っこいコタ。
そんな中でいつもであれば1人オドオドとしている美祈も鈴が鳴るような可愛い笑い声を響かせる。
いつもの座敷童スタイルではなく可愛さ溢れる姿が瑛太の視界に入っては落ち着かなく
「おい、座敷童。お前今日はやけに良く話すじゃねぇか」
つい揶揄うような言葉を発する。
「だって緊張しなきゃいけない人がいないもん」
美祈が言ったその言葉が嬉しくて瑛太は口元が緩む。
そんな瑛太の表情をマコは見逃さなかった。