泣き虫とヒーロー ~約束の四つ葉のクローバー~


通い慣れてきた学校から病院への道。

病院に入ると、

仲良くなった看護師さんと少しだけ話すと、

504号室の表札の横の扉に

返事はないとわかっていても

ノックをして病室へと入った。

やっぱり、郁人はまだ眠っていて、

少しだけ期待していた心がぎゅっと苦しくなる。

花瓶に花を生けると、

郁人の隣に座って、

郁人の体をマッサージしながら、

今日あったことを話す。

それが私の最近の日課だ。

「ねぇ、郁人マッサージ上手になったでしょ?
いっぱい調べていっぱい練習してるんだよ。

早く郁人起きてくれないかな。

郁人が目覚ましてくれたら、

この前行った水族館一緒に行こ?

あ、遊園地でもいいや。

イルミネーションも一緒に見たいな。

来年はさ、お祭り一緒に行こうね?
花火見て、

あ、でも受験か…

郁人は将来の夢ある?

私はねー、私の、夢、は…」

ボロボロこぼれ落ちていく涙。

虚しくなっていく自分。

笑って私の話に頷いてくれる郁人は、

今はいない。


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