泣き虫とヒーロー ~約束の四つ葉のクローバー~


言葉はわかるのに理解できない。

したくない。

小泉先生の胸ぐらをつかむ周平兄を
必死に止める優姫ちゃんと、理玖くんと春樹くんとお兄ちゃん。

泣き崩れる佐和子さんを支える信助さんとお母さんとお父さん。

私に何かを呼びかける玲奈と麻友。

全ての動きがスローモーションで、

白黒で、

声も聞けなくて、

ただ、感じるのは、

私の頬を伝う冷たい雫の感触。

止まらない、冷たい雫の感触だけだった。


足に力が入らなくなった私は、

膝から崩れ落ちるように倒れ込みそうになったのを、

ぐいっと腕を掴まれてなんとか免れた。

代わりに男の人の胸みたいなところに私は転んで、

その胸は、懐かしくて、

私がずっと求めていたもので、

顔を上げると心配そうに私を見つめる、


「…いく…と…」


大好きな人の愛しい人の顔だった。







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