泣き虫とヒーロー ~約束の四つ葉のクローバー~


けど、
郁人は怪訝な表情をすると、

「…いく、と?

だれですか?」

薄い綺麗な唇で、

現実を突きつけてきた。

鈍器で殴られたように痛くなる頭。

そうだ、

郁人は記憶を失っているんだよね、

シーンとなる病気に、

心細そうな表情をしている郁人。

私は涙を拭って、

郁人の胸から立ち上がると、

車椅子に乗っている郁人に手を差し出して、

「私の名前は、高山奈緒。
郁人の幼馴染だったんだよ。
何かあったらいつでも言ってね?
いつでも、郁人を助けるから。

ちなみに前は、郁人は私のことを奈緒って呼んでたんだ。」

にこりと笑いかけると、
こめかみを押さえて考え込む郁人。

「あ、無理に思い出さなくていいよ!
気長にいこう。
私でよければずっとサポートするから!」


涙よ、

今だけは、

今だけは、流れないで…



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