泣き虫とヒーロー ~約束の四つ葉のクローバー~



だけど、ガラリと空気が変わったのを

私は全身で感じた…

皆も同じみたいで、

緊張で顔を強張らせる皆。

ゆっくりと久保田先生は

血行の悪い唇を開くと、





「それで提案なのですが、

私たちと一緒に郁人くんのリハビリのサポートをしてくれませんか。」

…え?

シーンと静まり返る病室。

「実は、郁人くん検査の時に一回も笑わなかったというか無表情だったんです。

声も出さない、頷くか首を振る

無気力という感じでしたね。
けど、

あなたが倒れそうになった時、

すぐに腕を伸ばして支えたんです。

どういうことかわかりますか?

瀬山郁人くんにとって、あなたは特別な存在だからだと思うんです。

それは今も変わらず。

そんなあなたが支えてくれたら

郁人くんはリハビリを頑張れると思うんです。

もちろん、ご家族やお友達の方

たくさんの人の協力があってこそのリハビリです。

だから、みなさん。

特に奈緒さん郁人くんのリハビリを精一杯サポートしてくれませんか?」


ニコリと笑った久保田先生に、



私は、涙を流しながら何度も頷いた。

大丈夫。

郁人が歩けなくなったら私は郁人の足になる…

郁人の腕が動かないのなら私は郁人の腕になる…

郁人の目にもなれるし郁人の耳にもなれる…

私は、どんな郁人でも愛することを貫くよ…

だって、

郁人が隣にいてくれるだけで幸せだから。




だから、

お願いだから私のそばから離れないで…。



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