泣き虫とヒーロー ~約束の四つ葉のクローバー~



私は走って、

かかる前に自分の手で防いだ。

そして、

「美咲ちゃん、郁人はこのスプレーじゃだめって言わなかったっけ?

それに、反対の足だよね。

ちゃんと確認した?」

と優しくコールドスプレーで冷えた手をタオルで拭きながら問いかけると、

は?と言った美咲ちゃんは、

「そんなの知らないんですけど。

反対の足とかそんなの奈緒先輩の勘違いなんじゃないですか?」

と冷めた目線で私を見てくる。

は?

「なにそれ。

私何回も言ったよね?
部長と樫村くんと郁人は肌が弱いから市販のじゃだめだよって、

それに私の勘違いなら
郁人の足見たらわかるんじゃないかな。」


冷めた声で強く言うと口どもった美咲ちゃんは

「そんなのしらないし…
肌弱いならバスケとかするなし、」

その言葉に皆が怒ったのがわかった。

今にも掴みかかりそうな部長をゆっくりと制止して

私は今まで我慢していたものが爆発したように、

気づけば静かに美咲ちゃんを責めていた。

「知らないってしようとしてないからでしょ。

バスケが好きだからやっているのに、

他人にやらなきゃいいとか言われる筋合いある?

頑張っている人によくそんなこと言えるね。

第一、郁人は私のせいでバスケをすることになったんだよ。

私のせいで、私が、郁人が大好きだったサッカーをうば「奈緒!」


『サッカーを奪った。』

そう言おうとした私の震える声に被さった郁人の強い声。

私は涙をこらえながら振り返る。

郁人は震えた目で私を見据えていて、

下を向いて泣くのをこらえる。

ごめん、好きな人こんなに責められたら誰でも怒るよね…

改めて思い出す。

【郁人は美咲ちゃんが好き】

と言う事実。

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