第二秘書は恋に盲目
槇島さんがいないと、やはり1日がハードすぎる。目の前に立ちはだかる仕事量が確実にひとり分ではない。
ただ、今日だけはまだホテルで仕事をしていたかった。
そんなことを、孝宏さんの運転する車の助手席で揺られながら考える。こうも私がどんよりしてるのは、今日が彼氏を実家に連れていく、言い換えれば彼氏の実家にお邪魔する日だから。

付き合うことになった以上、親への報告は必要不可欠だというのはわかるけど、今から既に生きた心地がしない。

「吐くなら事前に言えよ」

「う…、吐きませんよ」

「実家に帰るのに緊張しすぎ」

「実家に帰るからでしょ!」

似たようなやりとりを何度も繰り返したおかげで、終始車内は賑やかなまま、あっという間に実家に到着した。

「はぁ…」

すでにぐったりなのは言うまでもない。
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