光のワタシと影の私

穏やかな学校生活

 特に頭が飛び抜けて良いわけでもなければ低すぎるというわけでもないワタシが通っている高校では、適当な友人を作って高校生活を過ごしていた。
 学生の中にはワタシが音楽活動をしていることを知っているという生徒もいるかもしれないけれど、わざわざワタシ自身の口から音楽活動を行っているという話しを友人にしてみたことはないからあまりワタシの音楽は友人に広まることは無かった。
 学校生活はとても静かなモノだ。
 決まった時間までに教室に入って、自分の席に到着すると通学鞄の中から宿題やら教科書やらと取り出して机の中に入れていくなかで登校してきた友人と授業が始まるまでにおしゃべりを交わしていくといった時間の繰り返しだ。
 「ねぇ、ねぇ。麗花って普段どんな音楽とか聴いたりするの?たまにイヤフォン耳に付けてるよね?」
 「麗花のことだからジャニーズとか?それともクラシック系?」
 「う~ん。秘密かな。へへ~」
 登下校の途中、授業と授業の合間の際には通学鞄の中から取り出したiPodにイヤフォンを取り付けて耳に掛けると短な音楽鑑賞を楽しんでいた。
 だけれど、ほとんど耳にしているのは自分の曲。
 たまに、今巷の流行りはどんな曲が多いのかとiPodに取り入れて聴くこともあったけれど、ワタシの作りあげた作曲にはどんな作詞が似合うだろうか…とそればかり考えることが多かった。
 それに今、世間ではいろいろなアイドルやグループが人気を集めているけれど、自分の音楽活動に忙しく過ごしている日常ばかりのなかではなかなか他人の曲を落ち着いて聴いている暇などなく、流行りには疎いところがあった。
 「音楽には興味があるんだけれど、ワタシってどんな曲が好きなのかイマイチ曖昧なところがあって…」
 そんなふうに言えば友人のあちこちからオススメのアイドルやら曲を教えてくれる。それを帰宅し、パソコンで検索したり動画サイトで曲を聴いていきワタシが気に入ったモノであれば愛用のiPodに取り入れていくものの余程の曲でないかぎり自分以外の曲をiPodに入れることはしなかった。
 ワタシの持っているiPodは高校に入学したばかりの最初の誕生日にようやく親から買ってもらった誕生日プレゼントだから未だに大切に愛用させてもらっている。
 予鈴が鳴れば各々の席に戻り、授業の準備をしていくとふと窓の外を見れば雲一つ無い青空についつい作詞の熱が上がりそうになったものの今は一人の高校生として授業に集中していかなければならない。
 これだ!
 と、良い詩が思い浮かぶことがあったとしても授業中、学生生活を過ごしている学区内では決して作詞行動に走ってしまうことは無かった。
 ワタシが少しでも作詞活動していることを友人に知られれば音楽に興味がある人間だと知られてしまうし、今まで大人しく過ごしてきた高校生活をぶち壊してしまうことになるだろう。
 ワタシはわざわざ自分から目立つような行為に手を出すようなことは控えている。
 先日スカウトされて音楽の道がより広がったことは話しが別モノになってしまうものの学校内にいる間は一人の女子高校生として友人とのやり取りを楽しむつもりだ。
 ただ、稀に学校内にもワタシの曲をライブハウスで聴いたことがある気がする、と声を掛けてきてくれた生徒もいたものだがそれは違う人間じゃないだろうか?とやり過ごすことが出来て、それ以来特に必要以上に絡まれることはなく平穏な学校生活を過ごしている。
 お昼はお母さんが作ってくれた愛のこもったお弁当を友人と揃って教室の中で楽しくおしゃべりをしながら食べていった。
 そのおしゃべりの中には、昨日見たテレビに出演していたタレントが格好良かったといった感想だったり、新しく始まったドラマの感想の善し悪しについての談話が続いていったのだが、ふと女子高校生らしく華の咲いた話題が生まれることもあった。
 「麗花は好きな人とかいないの?実はもう既に彼氏がいるとか?!」
 「あはは~、彼氏なんていないよホントに」
 「そうなの?麗花は美人だし、男子生徒とも会話してるところも見たことあるよ?気になる人とかもいないの?」
 穏やかな学生生活を送るためには、性別を関係無く友人を作っておくと楽だ。
 同姓の女子と仲良くするだけでなく、異性である男子ともある程度仲良くなっておくといろいろと楽だし、何か困ったことがあれば同姓・異性を関係無く相談することができるのでトラブルを避けることも出来る。
 「会話って、単なるちょっとした挨拶程度のものだよ~」
 「男女共学の高校っていってもさ~、男女が会話してるとなると怪しいなぁ~って周りとしては見ちゃうわけですよ~?」
 「ホントホント。彼氏とかそんなんじゃないから~」
 笑いながらお昼時間はあっという間に過ぎていってしまう。
 空腹だったお腹は満たされ、ついつい眠くなってしまう頭を切り替えていくと午後の授業に集中していかなければならない。
 確か今日か数学の小テストがあったはずだ。
 昨夜は勉強らしい勉強は出来なかったものの普段の授業をきちんと聞いてさえいれば最悪の点数をとってしまうような惨事になることはないだろう。
 「うわー…小テストとかマジ引くんだけどー」
 「ホントだよね。あの先生、ちょくちょく小テストやってるからあんまり評判良くないみたいだよ?」
 「評判ねぇ…」
 別に生徒から良い評判を貰いたいがために教師をしているわけではないと思うものの授業をすることが面倒なために小テストで授業時間を紛らわしているようだったらちょっといけない教師かもしれない。
 いざ小テストに臨んでみると、やはり思っていた通りそれほど難しいものではなく、日頃の授業をきちんと受けていればそこそこの点数はイけるテストになったと思う。
 友人とのやり取り、ちょっと恋愛にも興味を持ち始めた年頃故の恋バナに話しをツッコンデくる友人たち、小テストがあると分かればみんなと同じようにうんざりとしながらも赤点だけは取らないように小テストを解き、午後の授業も終えると友人と数分ほどおしゃべりをしてから帰宅していく。
 これがワタシの学校生活の日常だった。
 ワタシが帰宅していくと、一人の女子高校生という殻から飛び出して一人の音楽家として作詞や作曲といった活動を自分の部屋で行っていくのだ。
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