愛の歌、あるいは僕だけの星
如月夏が死んで、二週間が経とうとしていた。
案の定淡々と毎日が過ぎていく中で、相変わらず適当に仕事をして、恋愛の真似事をして、愛想笑いばかりを浮かべている。
ただ少し面倒なことがあるとすれば、如月が務めていたクラス委員を、彼女の親友だという神谷レンゲが引き継いだことだ。彼女は、所謂お節介なタイプの人間だから、どうにも自分のような適当な人間は許せないらしい。あれこれと口出しをしてくるものだから、うるさくて仕方ない。早々に苦手意識が生まれていた。
如月のがありがたかったなあと、それだけはしみじみと思った。
放課後、面倒な生徒会の仕事をようやく終えて教室へと戻る。既に十八時を過ぎていたので、誰も残ってはいない。少し雑然とした机のひとつ、不意に目に入ったもの。
藍色の花瓶に入ったガーベラの花が、如月の座っていた席に置かれていた。夕暮れの橙色を受けて、きらりと光る。そっと指で触れれば、つうと滴がガラスを伝い机に染みをつくった。
「痛かった?死ぬときって」