愛の歌、あるいは僕だけの星
その情景は、あまりにチープで、けれどこれ以上ないくらいにクリアな印象だった。如月が、もうこの席に座ることはないんだって、ようやく理解出来た気がした。
彼女の代わりには到底なれないガーベラの花は、けれどクラスメイトが一人死んだ、と告げられるよりもよほど現実味を帯びている。
窓から見えるグラウンド。部活で残っている人間の声が此処まで届く。しんと静まり返ったこの空間だけ、まるで別世界みたいだ。
枯れ始めた葉を、ぶちりと摘む。これが、彼女を偲ぶものだというのなら、なんて儚いんだろう。段々と朽ちて、記憶もこの花のように色褪せるのだろうか。