この恋は、風邪みたいなものでして。

「担当さんって女性ですか?」

ポロっと出てきた言葉に思わず両手で口を隠しても遅い。
颯真さんが不思議そうに顔を傾げる。

「俺の担当は全員男だよ。クマみたいなむさ苦しいけど頼れる人ばかり」

そんな事言われたら、益々あの女性ブランドのサングラスケースが担当さん達のではないと裏付けされてしまう。

「すいません、変な事言っちゃって。帰ります! 食べ終わったら電話下さい! とりに伺います」

早口で言うと、彼が私の手を掴もうとする。

「わ、駄目っ」

強く拒絶したかのように、彼の手を払いのけてしまった。

「あの、忙しい時間帯なので、これで」

そそくさと部屋から出ようと走り出すと後ろで彼が立ち上がるのが分った。

追いつかれないように急いでドアノブを回すも、トンっと長い腕がドアに伸び、私の視界を塞いだ。


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