自殺 ~飛べないカラス~
 思えば、「生まれて来てくれてありがとう」……だなんて、今まで言われたことなんて1度もなかった。

 自然と涙が溢れて、ポタポタと地面を濡らしていく。私は、その言葉が自分に向かって放たれる日を、心のどこかで望んでいたのかもしれない。


「あなたの人生の一部を僕に貸してくれて……こうして僕と出会って話を聞いてくれて、本当にありがとう」

「あ、の……」

「何も言わないで。これは、僕が勝手に思って、勝手に言っていることだから。あなたからの“何か(それ)”はいらないよ」

「……じゃあ、少し、聞いてもいいですか?」

「なに?」


 涙を袖で拭い、目の前の人物の両目をしっかりと見つめる。


「さっきの問題や、あなたが口にしていた“飛べないカラス”って、なんなんですか?」

「……ただの例え話を問題として出しただけだよ。“飛べないカラス”に関しては分かりやすいように鳥類を用いただけ」

「そういう意味じゃなくて……あなたにとっての“飛べないカラス”が何かを……知りたいんです」


「……どう解釈するのかはあなたの自由だし、僕が話せるようなことは何も。

 ――まあ、あえて例をあげるなら、“生きることを諦めた人間”……かな?」


「生きることを……諦めた人間……」
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