オークション
跳ね上がる
マラソンから帰ってきたあたしは自室でパソコンを立ち上げた。


今朝オークションに出しておいた自分の作品がどこくらいの値段になっているか確認するのだ。


一階では今日の優勝のお祝いを準備する両親の声や、足音が聞こえて来る。


お母さんが大きなケーキを作ると張り切っているから、後から楽しみだ。


鼻歌を歌いながらページを表示させると、そこには100万円の数字が見えた。


その数字に目を見開き、そして「ハハッ」と、声を上げて笑った。


オークションが終わるまで一週間もあるというのに、早くもこんな値段になっている。


ここまで一気に跳ね上がるとは思っていなかったあたしは、驚くと同時に笑いが止まらなくなってしまった。


1つの作品に100万も200万もの値段が付けば、想像以上に早く借金を返済することができそうだ。


金額を確認したあたしは、次に自分の名前を入力して検索にかけてみた。


沢山のホームページがヒットし、そのどれもがマラソンに関する記事や意見ばかりだった。


そこであたしは1つのサイトに目を付けた。


人の陰口でも平気で書き込めるような、悪質なサイト。


そこでもあたしの事は話題になっていて、スレッドは悪口で埋め尽くされている。


あることない事を平気で書かれているようだが、あたしの心は穏やかだった。


誰が何を言おうが、あたしは日本のトップだ。
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