オークション
下の人間が妬んでいるようにしか感じられなかった。


書き込みにザッと目を通してから、あたしはキーボードに指を置いた。


人の話題というのは悪口の方がずっと早く広まっていく。


悪口を言われて可愛そうだと考える人間だって、心の中では人の不幸を笑っていたりする。


《ai:今話題の陸上選手、今度は彫刻やってるらしいよ。一体何目指してんだろうねWWW》


その文章と共に、オークションページのリンクを貼り付け、書き込みをした。


すると1分も待たずに、返信があった。


《kima:ほんとだWWW》


《saku:いや、なかなかの腕前だと思うけど》


《gyuu:小物入れとかいらねぇWWW》


《taro:自分の才能をひけらかしてんじゃないの? チョーシ乗りすぎ》


《wada:確かにチョーシ乗ってんな。むかつく》


後はあたしの悪口が次々と連なって行き、aiの書き込みはすぐに他のサイトにも転機された。


あたしは唇をなめてオークションサイトの金額を見つめた。


100万円だった金額がゆっくりゆっくり上がって行く。


「バカばっかり」


あたしはそう呟き、笑ったのだった。
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