オークション
☆☆☆

そして、いつも通りモンピーの言葉を合図にオークションは始まった。


新田朝子さんの綺麗な顔に、綺麗な子頃。


それらを目の当たりにした参加者たちはいっせいに金額を打ち込んでいく。


しかし、今日の参加者たちは素人が目立つため、金額の上がり方は数百円単位だった。


「バカみたい」


あたしはモニターを見てそう呟いた。


今日のライバルたちは才能を手に入れる事で自分自身の人生が変わる。


ということを全く理解していないようだった。


何億もの金額を手に入れるためには、それなりの支出も必要なのだ。


あたしはチマチマと上がって行く金額にしびれを切らし、1000万円を入力した。


突然現れた高額な数字に会場内が一瞬静かになった。


モンピーもようやく本領発揮という様子でステージ上で飛び跳ねるが、そこから先がなかなか上がらない。


数百円ずつ増えていく値段にイライラしてくる。


ここにいる子たちは本気で《ミス日本の顔》を欲しがっているわけじゃないんだ。


そんな気さえしてくる。


その時だった。


斜め前に座っている石澤先輩がマスクを外した。


その顔が薄暗い会場内で浮かび上がり、タレントならではの存在感が解き放たれる。
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