オークション
それと同時に周囲に座っていた数人の女の子が石澤先輩に気が付いて、驚きの声を上げた。


……ようやく本気を出したか。


あたしはフンッと鼻で笑った。


本当にほしいなら、最初から本気でかかってくればいいのに。


石澤先輩が手元のボードを操作する。


画面上に3000万円の数字が表示された。


あたしはそれを見てニヤリと笑った。


才能を開花させた時とよく似た高揚感に包み込まれている。


あたしは間髪おかず、3500万円を入力した。


周囲はざわめきに包まれ、金額を入力する手が止まっている。


その間にもあたしと石澤先輩の2人だけで金額はグングン跳ね上がって行く。


数分後にはついに1億の大台に乗っていて、あたしは自分の手が汗に滲んでいることに気が付いた。


ここから先はあたしも見たことがない世界だ。


先輩が1億100万円を入力する。


さすがに少し怖気づいてきたのか、金額の上がりしろは下がってきている。


1億500万円を入力するあたし。


モニターに新しく数字が表示されるたびに、モンピーが嬉しそうに飛び跳ねた。


「どうしてそこまでしてあの顔が欲しいの」


石澤先輩がモニターに視線をやったまま、そう言った。


その言葉は間違いなく、あたしにかけられたものだった。
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