オークション
真実
藤吉さんが出て行った後の屋上で、あたしは立ちつくしていた。


藤吉さんはあたしがオークションに興味を持っている事を感づいている。


思えば、昨日のオークションのメールは藤吉さんにも届いているはずだ。


メールが届いてすぐに学校を早退したあたしを見て、感づいてしまったのだろう。


別に悪い事をしているわけじゃないけれど、罪悪感が胸の中に渦巻いていた。


藤吉さんの行為を否定しながらも、オークションに興味を持つ。


矛盾した行為をしてしまったことが、あたしの胸の奥で重たい岩のそうにのしかかってきていた。


「なによ、嘘ばっかりついて」


エレナが文句を呟いたことであたしは我に返った。


「嘘って、石澤先輩の事?」


「うん。あたし石澤先輩の事尊敬してるんだ。


高校生なのに自分の力で夢を叶えて、沢山テレビに出て。あたしもいつか大きな夢を持った時、石澤先輩みたに頑張ろうって、そう思ってたから」


「そうだったんだ……」


あたしは頷く。


確かに石澤先輩は生徒の憧れの人物だった。


容姿だけでなく性格も優しく、いつも笑顔の先輩だった。


あたしたちが入学して数か月で芸能界入りしてしまったから、そんなに会った事はないけれど、石澤先輩の悪口を聞いたことは1度もなかった。


誰からも愛されている。


そう感じたのを覚えている。
< 96 / 274 >

この作品をシェア

pagetop