オークション
☆☆☆

3年生の教室は3階にある。


同じ階にある音楽室に行く程度しか、あたしたちが3階まで上がっていくことはなかった。


「なんだか緊張するね」


エレナがそう言ってあたしの手を掴んだ。


昼休憩中の3年生は廊下やテラスに座り込み、お弁当を広げている。


1年や2年だとさすがにそんなところに座り込んだりはしないけれど、最上級生となるとやることが大胆だ。


あたしとエレナはそんな先輩たちを横目に見ながら3年A組のドアの前で立ちどまった。


ドアも窓も開けられていて、教室の中は丸見えだ。


しかし3年生の教室に来たのも初めてのあたしは、どうしていいかわからずその場で立ちどまってしまった。


何人かの先輩と目が合うものの、知らない下級生に興味がないのか視線を外されてしまう。


ここまで来たのに、どうしよう……。


そう思っていると、ドアに一番近い机に座っていた先輩が立ち上がり、こちらへ近づいて来た。


背が低く、中学生くらいに見える女の先輩だ。


目が大きくてとても可愛らしい。


左胸のネームには『神田』と書かれている。


「あなたたち、何か用事?」


小首を傾げて上目づかいでそう聞いてくる神田先輩。
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