オークション
先輩っぽくないその容姿に少しだけ緊張がほぐれる。


「あの……実はあたしたち石澤先輩のファンなんです。それでなにかお話が聞けないかと思って」


あたしは咄嗟にそんな嘘をついていた。


ファンだと言えば嫌な気持ちにはならないだろうと思ったのだ。


「祭のファンの子? わぁ! 嬉しい」


神田先輩はなぜかそう言い、本当に嬉しそうにほほ笑んだ。


「あたし、祭の幼馴染なんだ。どうぞ、入って入って」


神田先輩に背中を押され、あたしたちは3年A組の教室へと足を踏み入れた。


神田先輩が石澤先輩の幼馴染ということは、てっとり早く話を聞き出す事ができる。


あたしはそう思い、内心ガッツポーズをとった。


周囲の視線を気にしながら教室へ入ると、神田先輩は先ほどの席に座った。


「で、祭の何が知りたいの? 個人情報以外だったら、教えてあげれるよ?」


「じゃぁ……あの、石澤先輩の写真とかプリクラってありますか? テレビで見るだけじゃなくて、他でも見て見たいなって思って」


もしデビュー前の写真があれば、その頃の体型がわかる。


「もちろんあるよ! 実はあなたたちみたいな祭のファンって、毎日ここへ来るんだよね。だから毎日持ってきてるよ」


そう言って神田先輩鞄からは小さなアルバムを取り出した。


「あたしと祭は小学校の頃からの仲良しだよ。ほら、見てこれ。3年生の時の運動会でこけちゃって、祭が大泣きしてる所」
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