さくら
episode1.恋
拓海
しんかいまこ、か。
配られたクラス名簿で名前を確認する。
新海真子ね。
別に気になったとかそんなんじゃない。
ただ北海道の端にあるこの小さな村では、小学校は1クラス。中学は隣の村の小学校と合わせて2クラス。高校もほとんどの奴がエスカレーター式でこの笹川高校に行く。つまり高校って言ってもほとんどが中学からの顔見知りってわけ。
そんな中で見たことのない彼女のことが少し気になっただけだ。
「新海さんってここの村の子じゃないよね?どっかから引っ越してきたの?」
あ、みなみが話しかけた。
あいつほんと世話焼きだよな。
「うん、横浜から来たの」
「うわすごい都会じゃん!こっち来てびっくりしたでしょ。ここ何にもないからさー」
「でも空気はこっちの方が全然きれいだよ」
「そんなのわかるの?」
「わかるわかる。横浜の空気と全然違う」
「へえーすごい。でも私は空気がきれいよりおしゃれなお店とかがいっぱいある方がいいなー。あ、これから真子って呼んでいい?」
「もちろん!私もみなみって呼んでいい?」
「うん!仲良くしよー」
もう打ち解けてる。
「なーにぼーっとしてんの拓海!」
そうやって背中を叩いてきたのは幼なじみの優生。
「そんなぼーっとどこ見てんだよ」
「え、もしかして拓海あの子のこと好きになっちゃった?」
「えー一目惚れかよー」
同じ幼なじみの暁丈も来た。
「んなわけねーだろー。見たことない顔だからちょっと気になっただけだよ」
「まあそんなことだと思ったわ。確かにあの子顔からして都会の子って感じだよな」
「優生お前もみなみとあの子の会話聞いてたのかよ」
「お前も聞いてたじゃん」