チョコレートプリンス*きみだけをずっと*
その後もぐるぐる混ぜてみては
「だめだね、ちゃんと混ざってない。砂糖がちゃんと溶けてないよ」
「だめだね、クリームにツノが立っちゃってる、それは絞り出し用のクリーム」
「だめだね、もう一回」
と尚くんに何度も『だめだね』と言われて、次のボウルが渡される。
おかげで調理台の上はあたしの失敗したホイップクリームのボウルでいっぱい。
それに最初はやる気いっぱいだったのに、ずっと電動ミキサーを混ぜ続けているから腕も手首を疲れてくる。
でもさっきみたいに諦めて逃げ出そうって気には絶対にならなかった。
それはやっぱり尚くんの自主練の時間を取っちゃってるからと
翔斗の作るケーキに劣らないホイップクリームを作れるようになって、こうやって練習してるんだから本番でも“作って”って言ってもらえるようになりたいから。
もうあたしはあの悪口を言ってきた子たちなんて頭の中になかった。