Butterfly
警察署裏の駐車場。

市谷さんは、「乗って」と言って、シルバーのハイブリッドカーの鍵を開けた。


(これは、市谷さんの車だよね)


任意同行の時、乗せてもらった車と違う。

助手席は乗りにくいし、里佳さんの指定席だろうから、私は後部座席のドアを開けて、市谷さんの斜め後ろの位置に座った。

「・・・疲れただろ」

車を走らせること数分、市谷さんがミラー越しの私に尋ねる。

連れて来られた時同様、二人きりの車内なのに、私に話しているのかと一瞬ドキッとしてしまった。

「はい・・・。でも、私が頑固だっから」

時間がかかったのは、私がなかなか胸を見せなかったせい。

その自覚がある私は、警察側を一方的には責められない。

「いや・・・キミには事情があっただろう。嫌な思いをさせて悪かったな」

「あ・・・いえ・・・」

見せたくない、と頑なに拒んでいた、大きな痣がある胸のこと。

津島さんからどういう説明を受けたのか、それはわからないけれど、市谷さんはそう言って私を慮ってくれた。

「さっき、岡本がいなかっただろ」

「はい・・・」

「ちょうど別件で呼ばれたんだ。キミと会いたくなかったわけじゃない」

市谷さんはエスパーだろうか。

私が気にかけていたことを、わざわざ言葉で伝えてくれた。
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