Butterfly
「・・・ほちゃん、千穂ちゃん」


(え・・・?)


(・・・・・・あっ!)


「ごっ、ごめん・・・!!なに?」

どんよりと、ひとりで考え込んでいた私の耳に、蒼佑さんの声が聞こえた。

私ははっと姿勢を正し、慌てて彼に聞き返した。


(いけない・・・。そうだ、今は、蒼佑さんの車にいたんだ・・・)


過去を思い返しながら、すっかり考え込んでしまった。

焦りながら必死に普通を装う私を、蒼佑さんは心配そうに横目で見つめる。

「いや・・・。すごい難しい顔してたから。車酔いでもしたのかなって」

「あ・・・ううん!ごめんね。ちょっと考え事しちゃって・・・」

「考え事?」

相変わらず、心配そうな蒼佑さん。

私はさっと視線をそらし、「うん」と短く頷いた。

「なんか悩み事かな。オレで良ければ相談乗るけど」

「あ・・・ううん!大したことじゃないんだ」

「へへっ」と笑うと、蒼佑さんは「そっか」と言って、少し寂しそうな顔をした。


(・・・ごめんね、蒼佑さん)


上手く・・・誤魔化せたかな。

蒼佑さんとのこれからを、不安に思っているなんて。


(・・・やっぱり、言えない)


優しく心配してくれる彼に、こんな不安を伝えるなんて。

私には、そんな勇気はでなかった。
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