Butterfly
「あ・・・そうだ。ちょっと早いけど、もう夕飯でも大丈夫かな」

しばらくの沈黙の後、表情を切り替えた蒼佑さんは、明るい声で私に尋ねる。

私は「うん」と頷いて、彼の次の言葉を待った。

「良かった。いや・・・ほら、千穂ちゃんが前に行きたいって言ってた、鉄板焼きの店があったでしょ。雑誌に載ってたっていう」

「・・・えっと、川沿いの・・・?」

「そう。あそこの窓際の予約が取れたんだ。て言っても5時半からだから、夕飯にはちょっと早いんだけど」

「それは全然・・・。でも、予約も2ヶ月待ちって聞いたけど」

「ちょうど電話した時、キャンセルが出て取れたんだ」

「すごいラッキーでしょ」と、嬉しそうに彼が言う。

「わ・・・!そうなんだ。うん!行きたかったから嬉しい。ありがとう」

彼にお礼を言いながら、もしかして、と私は思わず考える。


(キャンセルがでないかって、毎日お店に電話を入れてくれた気がするけど・・・)


違うかな。

それはもちろん、想像だけど。

私はあえて、口には出さないことにした。





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