Butterfly
「ねえ、市谷さん」と龍平さんが話を振ると、市谷さんは冷ややかな表情で龍平さんをチラリと睨んだ。

「あいつと会ってたのは店だけか。どこかに二人で出かけたりした?」

話を仕切り直すように、市谷さんが問いかけた。

咲良は少し考えて、「はい」と言って頷いた。

「一度だけ、買い物に」
 
「買い物・・・。キミの支払いか」

「はい・・・その日は、悠翔さんの誕生日だったから」

「・・・そう。誕生日ね」

市谷さんが、訝しそうに頷いた。

私は事の成り行きを、ハラハラしながら見守った。

それから、店に出入りするようになったきっかけを聞かれると、咲良は道で声をかけられ、次第に好意を持ったことを告げた。

「知り合った時、キミは自分のこともいろいろ話した?大学のこととか、家の・・・病院のこととか」

「大学名は言いました。家は・・・うちの病院の名前は言ってませんけど・・・パパが医者だっていうことは言いました」

「・・・そうか」

頷く市谷さんに続き、龍平さんが質問をする。
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