Butterfly
そしてそのまま、ブラジャーの両側をぐっと左右に広げると、胸にある痣の全てが彼の目にも露わになった。

「結構大きいしひどいから、びっくりしちゃうと思うんだけど・・・」

「あ、いや・・・。どうしたのって、聞いてもいいのかな」

「・・・うん。聞いてほしくて、見せたんだ」

ためらいがちに尋ねる彼に、うつむきながら話を始めた。

真っ直ぐに彼を見ることは、まだ私には勇気がなかった。

「生まれたときからある痣なの。悪い病気とかじゃなくって・・・。これ以上どうにかなったり、人にうつったりはしないんだけど」

話しながら、過去の記憶が甦る。

小学校時代の、男の子たちの高笑う声。

可月さんの、まるで汚い物でも見るような、冷酷な瞳の歪んだ表情。

『うつる』とか、『気持ち悪い』とか。

『ビョーキだ』っていう言葉たちが、耳元で、思い出す度こだまする。

悲しくて、言うのがやっぱり怖くって。

話すことを決意したのに、口に出すと、涙がこぼれそうだった。

「レーザー治療は受けたんだけど、私の痣には効かなくて・・・。手術は絶対じゃないし、怖くてもうできないの。

だから・・・私・・・このままなの。ずっと、このままこの胸なの。

だから・・・気持ち悪いとか、触りたくないとか、あったらすぐに言ってほしいの」

涙が頬をこぼれてしまった。

自分から、「気持ち悪い」と口にしたのは初めてで、その言葉は思っていた以上に、私をとても傷つけた。
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