Butterfly
「えーと・・・どうすっかなー・・・。あのへんでいいか。あそこの脇で車止めるね」

「うん」

蒼佑さんの車に乗って、走り出すこと30分。

気がつけば、彼の職場の一歩手前の場所だった。

もう少し前の道で降ろしてもらう予定だったけど、タイミングが悪く、なかなか駐車できなかったのだ。

今はもう、すぐそこに警察署の入り口が見えている。


(知ってる刑事さんに会ったら、冷やかされちゃいそうだよね・・・)


見つかる前にささっと降りよう、と停車した彼の車から、急いで降りようとすると。

「千穂ちゃん」

蒼佑さんに名前を呼ばれ、運転席の方を向く。

彼は咄嗟に呼んでしまったようで、続く言葉を少し探した。

「あ・・・その、気を付けて」

「うん。蒼佑さんも、お仕事がんばってね」

「・・・うん」

彼が笑った。

私がいちばん好きな顔。

その優しくて甘い表情に、私は思わず、頬を熱く染めてしまった。

「千穂ちゃん」

「・・・うん・・・」

「・・・・・・かわいいな、ほんとに」
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