Butterfly
甘さを含んだ低い声。

蒼佑さんは私の頬を、撫でるように優しく触れた。

そしてそのまま顔を近づけると、私にそっと口づけた。


(私だって・・・)


本当は、もっと一緒にいたかった。もっと、こうしてキスしたい。

そんな気持ちを伝えるように、彼の腕をぎゅっとつかんだ。

すると彼は私を引き寄せ、キスの深度を奥へ進めた。

胸の中の、速度と温度が上がり続ける。

幾度か息をもらしながら、私は情熱的なキスに応えた。

そんな、熱っぽい時間の合間。


ブーブーブー・・・。


(・・・ん?)


ふと、空耳のように、どこからか聞こえる受信音。

鳴りやまない様子から、多分電話に違いない。

私は少し唇を離し、尋ねるように彼に言う。

「蒼佑さん、電話・・・」

「・・・・・・いいとこなのに」

ため息交じりに、蒼佑さんが身体を離す。

そして残念そうな表情で、ごそごそとカバンの中から鳴り続けるスマホを出した。

「まったく・・・。誰だよ」

ぶつぶつと、不服そうに画面を確認。

すると即座に彼の顔からさーっと血の気が引いて行く。

大慌てで通話ボタンを操作すると、スマホを耳にピタリと当てた。

「は、はい・・・!おはようございます!」

『おまえは・・・そんなとこでなにしてるんだ・・・』

話し声が漏れ聞こえた。

彼の様子と、なんとなくの声音から、市谷さんだと推測する。
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