Butterfly
それからは、それまで以上に痣が見えないように気を付けて。

そして、必要以上に男子と関わらないように、注意を払って生きてきた。

だけど。

男性が苦手な気持ちと恋愛に憧れる気持ちは、私の中では別物で、心の中で共存していた。


(だから、可月さんに『付き合おう』って言われた時には、本当に嬉しかったな・・・)


ドラマのような恋愛に、少女漫画のようなヒーローに、私はひそかに憧れていた。

そしてそんなヒーローに、可月さんを重ね合わせた。

年上で優しくて大人で・・・あの時の男の子たちのように、私を傷つけたりしない。

あの時の私はそう思って、可月さんに、憧れと大きな期待をもっていた。


(だけど・・・)


「千穂」

名前を呼ばれ、私ははっと意識を戻した。

現実の、薄暗闇に包まれた世界。

今私が立っているのは、初めて訪れたホストクラブだ。

「どうした?昔のことでも思い出してた?」

「!」

目の前で笑う可月さんの顔を見て、私は眩暈がしそうにクラクラとした。

「・・・こっち」

ふっと笑うと、可月さんは私の腕を引っ張って、店の奥へと連れて行く。

心臓が、気持ちが悪くなりそうなほど大きく脈打っている。

彼に抗う力も、判断力も、今は皆無の状態だ。
< 51 / 186 >

この作品をシェア

pagetop