Butterfly
「はい、ここだよ」

紫色の扉に、銀色で「RESTROOM」の文字が光る。

橙色をした天井ランプが、私と可月さんを妖しく照らす。

ここはまるで、魔法使いに囚われた檻の中のようだと思った。

「どうぞ。入らないの?」

「・・・」

可月さんが、私を見下ろしにやりと笑った。

その笑い方は、当時と変わっていない気がして、私は嫌悪で身震いがした。

「咲良ちゃんの友達が、まさか千穂とはね。・・・驚いた」

心を乱した私のことを見透かすように、可月さんが話を続ける。

そして一歩、一歩と近づいてきて、私は何歩か後退りした。


(あっ・・・)


トン、と、背中が壁にあたってしまった。

これ以上、後ろに逃げ場がなくなった。

うろたえる私。

にこりと微笑んだ彼は、両手を壁につき、私が動けないよう腕の中に包囲した。

「相変わらずかわいいじゃん。変わらないね」

可月さんが、至近距離で私の顔を覗き込む。

逃げ出してしまいたいのに、全く足が動かない。
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