Butterfly
「・・・千穂ちゃん、大丈夫?」

その声に、はっと目線を上に向けると、蒼佑さんが心配そうに私のことを見つめていた。

「一度、休憩いれようか」

気遣ってくれる彼の瞳。

こんなときでも、蒼佑さんは私に優しくしてくれる。

私は胸が苦しくて、泣きたいような気持ちになった。

「岡本」

ずっと静かに聞いていた、佐渡さんが口を開いた。

蒼佑さんを制するように、彼の肩をポンとたたいた。

「彼女だかなんだか知らないけどさ。甘やかすなよ。ホストクラブに行くような女だぞ。動揺してる演技じゃないのか」

冷たい口調。

黒縁眼鏡の奥の瞳は、軽蔑するような眼差しだ。


(ホストクラブに行くようなって・・・。演技って・・・)


佐渡さんの態度と言葉にショックを受けて、私は、反論すらもできなかった。

自分の行動が、全て否定された気がした。

自分だけでなく、咲良のことも、一緒に否定されたような気がした。
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