Butterfly
「千穂ちゃん・・・!」

蒼佑さんが、焦った様子で私の元に駆け寄った。

真横に来た彼の顔は、とても苦しげで、私の胸を痛ませた。

「何もないなら、ちゃんと見せて・・・確認してもらった方がいい。そうじゃないと、千穂ちゃんはこのまま疑われ続けることになるんだよ」

「・・・・・・うん・・・」


(でも・・・。見せたくないの・・・)


きっと、この気持ちは、誰に言ってもわからない。

このまま容疑者として扱われるなら、そのぐらい見せたらいいのにって、みんなはそう言うかもしれない。

だけど。

何度も、何度も傷ついた。

見せなければ、知られなければ、その時よりも深い傷なんて、負うことなんてなかったのに。

あの時も、そして、あの時も。

痣の存在を知られるたびに、私の傷は、底なしのように深く深くえぐられていく。


(そんな結果がわかってるのに・・・こんな形で・・・こんなところで見せたくないよ・・・)


「千穂ちゃん。違うなら、ちゃんと否定してほしいんだ」

「違う。違うよ!・・・でも」
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