Butterfly
「・・・なるほどね。まあ、わからなくもないわ。結構ひどいもんね」

変わらずに、淡々とした口調だった。

それは、私にとって予想していなかった反応で。 

「気持ち悪い」、と、言葉や態度で拒絶されるわけでなく。

「かわいそうね」、と、同情されるわけでもなく。

ただただ、津島さんは目で見た事実を述べただけ。

当然、嬉しくはないし、「ひどい」という言葉が胸に刺さったことは確かだけれど、不思議なくらい、嫌な気持ちはしなかった。
 
「さっき岡本くんから聞いた。可月は元彼なんでしょう?それで可月はその痣のことを知っているんだ?」

逮捕直前、可月さんの指先は私の胸元に伸びていた。

それを、津島さんはその目で見ている。

逃れられない事実を前に、私は頷くしかなかった。

「・・・そっか。岡本くんにはまだ見せてないのよね。付き合って、結構長いんじゃないの?」
 
「3ヶ月ぐらいです」

「3ヶ月・・・。ふーん・・・そうなんだ」

津島さんは人差し指を顎に当て、考えるように首を傾げた。

「可月とは一か月くらいの付き合いだったのよね?

ずいぶん短い期間なのに可月は知ってる。でも、岡本くんは知らない。もしかして・・・可月に何か言われて・・・それがトラウマになってたりする?」
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