Butterfly
キスをしたことは、それまでにも何度かあったから。

肩を抱かれてキスされたときも、私はドキドキするだけだった。

でも。

そのまま、ブラウス越しに胸を触られたとき、私はやっと、それからの展開を想像することができたのだ。

『初めてでしょ。大丈夫だから』

優しい口調だったけど、拒否権なんてなさそうだった。

今まで見たことのない、可月さんの男の顔。

ぐっと床に押し倒されると、私はなんともいえぬ恐怖に震えた。


(怖い・・・!)


もっと、何度も何度もデートを重ねて、こういうことをするんだって。

もっと、優しくて甘い言葉をたくさんたくさんかけられて、徐々にすすんでいくと思った。

夢ばかり見ていた私は、可月さんの力強さが、激しくキスする唇が、とにかくとても怖かった。


(どうしよう・・・)


そればっかりが、頭の中を駆け巡った。

嫌われるかもしれない、そう思うと、「やめて」なんて、私にはまさか言えなかった。

そんな、いっぱいいっぱいの状況の中。

私は痣の存在を、すっかり忘れてしまっていたんだ。
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