Butterfly
進んでいく彼の指先。

首筋にキスをしながら、可月さんは私のブラウスのボタンを開けた。

そして胸元に触れ、そこにキスをしようとした瞬間、彼は動きを止めて私の胸を見下ろした。

『うわ・・・なにこれ・・・』

可月さんが、ばっと後ろにのけ反った。

あらわになった私の胸元。

彼が、私の痣を初めて目にした瞬間だった。

『・・・ビョーキ?』

『ううん・・・生まれつきで・・・』

嫌悪感に満ちた眼差し。

私はもう、泣きそうだった。

『うつったりしないの?』

『うん・・・ただの痣だから・・・』  

そう言っても、可月さんは信じていない印象だった。

彼は無言で立ち上がると、洗面所へと歩いて行った。


ジャー・・・。


手を洗う彼の姿が、鏡越しに目に入った。  

『ビョーキ』

『気持ち悪い』

『うつる』 

頭の中で、小学校時代の、高笑う男の子たちの声が今にも聞こえたようだった。 

目の前が、真っ黒い闇に包まれる。

あの時の記憶が、さらに酷に塗り替えられた。

子どもの無邪気は残酷だけど、無邪気で片付く年頃ではない。

私のことを拒絶したのは、ヒーローだと思っていた、大好きな自分の恋人だった。
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