Butterfly
子どもの頃の比ではない、絶望感が私を襲った。

そして、下着姿のまま呆然と座り込んでいる私を、さらに追いつめるように彼は冷たく言い放ったんだ。

『気持ち悪いから、早く服着ろよ』

『・・・!』

嫌悪感に満ちた、可月さんの歪んだ口元。

それは、完全に私への拒絶を意味していた。
 
そしてそこからは、もう、なにがなんだか覚えていない。
 
ただ、涙をこらえ、急いで服を身に付けて、彼の部屋を逃げるように飛び出した。 

どこをどう歩いたのか。

気付いたら家にいて、ひたすら部屋に閉じこもり、ずっと泣いてばかりいた。

それからは、彼と会うのが怖くって、つながりを持っているのが怖くって、バイトも辞めて、連絡先も変えてしまった。


(こんな思い出・・・もう、忘れてしまいたいのに・・・)


忘れたくても忘れられない。

当時のことを思い出し、真っ暗闇にずるずる引き込まれていく。

思わず涙がこぼれそうになり、私はぎゅっと瞼を閉じた。




「・・・やっぱり、可月に何か言われたんだ?」

津島さんの声で、私ははっと我に返った。

無言のままうつむく私。

それを返事ととったのか、津島さんは「そっか」と言って頷いた。
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