Butterfly
津島さんが笑う。

嫌味たっぷりの取り調べを受けていたから、その穏やかな表情に、私はまたも驚いた。

「可月からなんて言われたのかわからないけど。相当ひどいこと言われたんでしょう。そうじゃないと、ここまで頑なにはならないもんね」

無言で私は頷いた。

「・・・そっか。でも、大丈夫だって思うよ。岡本くんなら」

「えっ・・・」

「頼りないけどね。そういうことであなたから離れたりしないと思うわよ」

眼鏡を押し上げ、津島さんが話を続ける。

そして意味あり気な雰囲気で、ふっと軽く口角を上げた。

「すぐにはできないだろうけど。落ち着いたらちゃんと話してみれば?

それでもし・・・岡本くんがあなたから離れるようなことがあったら、彼がそれだけの男だったってことだけよ」

「はい・・・でも」

「岡本くんて、確かに顔はかわいいけどね。仕事はあんまりできないし。どっちかっていうとヘタレなタイプよ。

岡本くんにはあなたよりいい子は現れないと思うけど、あなたなら、岡本くんよりいい男なんてそれこそたくさんいると思うわ」

「だから大丈夫」、そう言って私に語りかける彼女の顔は、優しくて、頼もしくて、取り調べ中の津島さんとは、まるで別人のようだった。

「ああ、岡本くんには言わないけど・・・市谷さんには報告させてもらうわね。

この班のリーダーだし、事情を話さないわけにはいかないから」

「・・・はい・・・」


(そうだよね・・・。私はあれだけ拒んでいたし・・・)
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