203号室で暮らそう
這ってまでして出席しなきゃいけない講義じゃないけれど。
 
逃げてちゃ、いけない。
 
遅れて教室へ入ってきた私に、コツコツとノートをとっていた陽景くんは、少し驚いた顔をした。
 
講義室の一番後ろにいた、雄輔の背中を、今、見てきたけれど。
 
思いの外、胸は痛まなかった。

「ゆーか、どうしたの? 熱は……」

「下がったよ」

「でも、まだ安静にしてなきゃ。それに――」
 
陽景くんはちらりと視線を後ろに投げかけた。
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