パッシングレイン 〜 揺れる心に優しいキスを

連続攻撃に、追撃不能。
真っ赤になった頬を両手で隠すことしか出来なかった。


「ひとつだけ聞きたいことがあるんだけど……」


顔を上げると、打って変わった真面目顔を向けられて、緊張感に包まれる。
その顔を見て、部長が何を聞こうとしているのかを察してしまった。


「二葉の失恋の相手って……」


その先を聞きたくなくて、キュッと目を閉じる。


「確か、“アツヤ”って名前だったよね? それって……この前会ったお兄さん?」


ズキンと胸が痛んだ。
あの時、やっぱり部長は気付いていたのだ。
“篤哉”イコール兄だということに。

出来れば、部長には知られたくなかった。
血の繋がりがないとは言え、兄を焦がれる妹なんて受け入れがたい事実。
でも、もう言い逃れなんて出来ない。
頷くことで精一杯だった。


「……そうか」


明らかに困ったような空気が、部長から漂ってくる。
顔も見られなくて、俯いたまま背を小さく丸めた。

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