パッシングレイン 〜 揺れる心に優しいキスを

「部長……?」


どうして部長がここに?
その格好は?


どういうわけか、部長はグレーのタキシードに身を包んでいたのだ。
それじゃまるで、新郎だ。


「二葉、綺麗だ」


眩しそうに目を細めながら、ゆっくりと部長が近づく。
そして、私の前まで来ると、私の両肩をそっと包み込んだ。


「……あの、これは……?」


訳が分からなく、頭の中がパニックになる。
私が今日ここへ来たのは、琴美のドレス選びに付き合うため。
それが、どうしてこんなことになってるの?


「二葉と結婚式を挙げたかったんだ」

「……けっこん……しき?」

「今日これからここで、俺たちは結婚式を挙げる」


部長の言葉に固まってしまった。
今日、これから……?
それじゃ、琴美のドレス選びっていうのは、私をここへ連れてくるための嘘だったの?

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