パッシングレイン 〜 揺れる心に優しいキスを
通り雨が連れてきてくれた、部長との出会い。
それが、こんなにもかけがえのないものになるなんて、あのときの私は知らなかった。
光の見えない恋しか知らなかった私に、ありったけの優しさを教えてくれたのは、部長だった。
愛しくて大切で、胸が震える。
不意にこぼれた涙。
抱えきれない想いが溢れていく。
「おい、泣くなよ」
部長が慌ててポケットを探る。
取り出した真っ白なハンカチで、私の目元をそっと拭ってくれた。
「それで、返事は?」
「……はい、喜んで」
答えると同時に、額に部長の唇が触れる。
「それと、もうひとつ」
部長は人差し指を立てて、私の顔を覗き込んだ。
「“部長”っての、そろそろやめてくれない?」
思わず口を押える。
琴美にも言われていたんだ。
『いつまで部長って呼ぶ気?』って。