初恋は叶わない
「デカイ声出すなって。冗談だろー?
しゃあねえな。ほら」


早川はちょっと残念そうに言うと、

私のちょうど足元に自転車を停めてくれた。

それでも荷台に着地するには、少し距離があって。

登るときは余裕だったのに、降りるとなると、

下駄のせいもあって、かなりコワイ。

そうだ。脱いじゃえばいいんだ。


「これ、持ってて」


私が両足から抜き取った下駄を手渡すと、

早川はそれを自転車の前カゴに放り込んだ。

それでもまだ少し躊躇してる私に、

早川の右手が、そっと差しだされる。

その上に、乗せるだけのつもりが、

緊張してるのか、つい掌に力が入った。

すると、早川も強く握り返してくれて、


「あ、ありがと」

「どういたしまして」


単純だけど、それですごく安心した私は、


「「せーの」」


で、なんとか飛び降りることができた。

両足で着地した荷台は、その衝撃にたえられずに、

ガタガタと揺れ、


「うわぁっ!」

「おっと」


自転車ごとひっくり返りそうになるのを、抱きとめられて、

そのまま地面に降ろされた。

これじゃ、腕の中に飛び降りたのと変わらないじゃない!

カッコ悪過ぎる。
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