わたしの意地悪な弟
 わたしは何を感じ取ったのか分からない。ただ、わたしの喉がごくりと鳴る。

 わたしが自分の行動をごまかそうとしたとき、樹の影がわたしに近寄ってきた。

 彼はそのまま唇を重ねてきた。

 樹の背後で花火が天に昇っていくのが見えたが、急な出来事で、わたしは何も言えず、目を閉じることさえできなかった。

 樹の顔がわたしから離れる。

 緊張からか、夏の暑さのためか、わたしの喉がさっと干上がっていく。

 だが、その喉が潤う前に、わたしの唇は再び塞がれた。

 樹がもう一度唇を重ねてきたのだ。

 突然の出来事だったのにも関わらず、わたしは心のどこかで準備ができていたのか、二度目の彼の唇が触れる前に、目を閉じていた。

 避けようと思えばいくらでもできた。

 でも、わたしはそうしなかったのだ。できなかったのだと思う。

 彼の唇がゆっくり離れ、わたしの心臓が百メートルを全力疾走したかのように、早い鼓動を刻みだす。

 わたしは目を閉じ、受け入れていたのにも関わらず、呆気にとられて樹を見ていた。

 彼はわたしの額に手を載せ、顔を背けた。その頬は今までみたどんなときよりも赤く染まっていたのだ。
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