わたしの意地悪な弟
「そろそろ行こう。遅れると、日和がうるさいしな」

 樹はそう言うと、目を細めた。

 まるで幼いとき、両親が再婚する前のような表情で。

 高鳴っていた心臓が熱を持ち、今までとは違う、体全体が震えるような鼓動を始めた。

 わたしは唇に手を寄せると、首を縦に振る。

 ふとそこで我に返り、辺りを見渡す。

 辺りはわたしたちが到着したときのように、ひっそりと静まり返って人の気配は全くない。

 見られていなかったみたいでよかった。

 そう思う一方で、頭のどこかでそんなことはどこでもいいと訴えていた。


 樹の左手が再びわたしの右手をつかんで歩き出す。

 まるで全身が心臓へと化したかのように、体全体が大きく鼓動し、歩くたびに、その高鳴りが大きくなっていき、樹に手のひらを通してその鼓動が伝わっていないかをただ気にしてた。
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