わたしの意地悪な弟
「そうなの? なら日和と樹は?」

 母親は残念そうな表情を浮かべた。

 樹と日和は顔を見合わせる。何か目で合図をし合い、どうやら日和が言う役目を担ったようだ。

「せっかくだから二人で楽しんで来たら? たまにはいいと思うよ」

 日和はそう口にする。

 樹も頷く。

 わたしもその提案には異存はない。

「そう。どうせなら日にちをずらしてもいいのよ」

「いいよ。また、今度みんなで行こうよ。冬休み辺りに」

 日和がそう明るく言い放ったことで、二人は困りながらも、子供たちの提案を受け入れることにしたようだ。

 食事を終えると、一足先に部屋に戻った日和の部屋をノックした。

 彼女はあくびをかみ殺しながら、扉を開ける。

「どうかした?」

「旅行行かなくて、よかったの?」

「お姉ちゃんを一人にするわけにはいかないし、お姉ちゃんが一緒じゃないと物足りないもの。お父さんもお母さんもそう思っていると思うよ。

それに夫婦水入らずというのもたまにはいいんじゃないかな。お父さんとお母さんが二人でどこかに行くなんて今までなかったでしょう」
「そうだね」
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