わたしの意地悪な弟
 翌朝、樹は無言で家を出る。わたしも彼についていくように家を出た。

 別々に出なかったのは、親に心配をかけさせないためだ。

 なんで本当のことを言ったのに顔を合わせないんだろう。

 樹だって本当は他の子とデートしたりしている。事実を忠実に述べただけだ。

 何度心に言い聞かせても、わたしの気持ちは重くなる一方だった。


 その時、背後から背中を叩かれる。

 珍しく、セーラー服を着た日和の姿があった。

 彼女はわたし達よりも出て行くのが少し遅い。

 樹は日和をちらりと見ただけで、淡々と歩いていく。

 少し遅れて歩くわたしに、日和はささやいてきた。

「喧嘩でもしたの?」

「喧嘩みたいなのならいつもしているけど、樹の気持ちなんてわたしには分からないもの。昔から」

「そっかな。わたしは樹の気持ちなんて、顔に書いてあるも同然だと思うよ。むしろ、お姉ちゃんの気持ちが分からない。でも、わたしに取ってみたら、お姉ちゃんの気持ちも赤子の手を捻るようなものだけどね」

「それって結局、わたしと樹の気持ちはわかりやすいということだよね」
< 185 / 287 >

この作品をシェア

pagetop