わたしの意地悪な弟
 マグカップや食器も考えたが、全てそうしたものは家族の共用になっているため、樹へのプレゼントだと何かが違う気がした。

 わたしは店の外をぱっと仰ぎ見る。その視線がある一点で止まった。

 わたしの目に飛び込んできたのは、正面の店のウィンドウに並んだマフラーだ。

「あれ、樹に似合いそう」

「確かによさそうだけど、ああいうのって高いんだよね」

 店頭にセールの文字が書かれているが、それだけでは心もとない。

「価格だけでも確認してきたら? わたしは会計を済ませてくるよ」

 日和は行列のできたレジを指さした。

 わたしは日和の言葉に甘えて、お店を出た。

 店の前に行き、値札を確認すると半額以下になっていた。本来の価格ならなかなか手が伸びないが、価格も手ごろになっている。


 買おうかな。

 だが、その決断もここ最近の出来事を思い出し、おのずと鈍る。

 わたしが樹に何かを買って迷惑じゃないんだろうか。

 なくつもりはなかったのに、今後のことを考えると、じんわりと視界が滲んだ。

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