わたしの意地悪な弟
 いけないと、手で目元を拭おうとしたとき、ぼやけたショーウインドウに人影が写り、わたしは振り返った。

 そこには黒いジャケットに紺のマフラーを巻いた半田君の姿があったのだ。

「偶然だね。買い物?」

「親から買い物を頼まれてさ」

 彼の手にはラベルのはられたトイレットペーパーが握られている。

 わたしはそれを見て、苦笑いを浮かべた。


「親孝行だね。今日部活は?」

「休み。普段部活で迷惑かけているから、これくらいはしないとね。藤宮は買い物?」

「妹と一緒に来ているの。妹は会計中で」

 わたしは出てきたばかりのお店を指さした。

 まだ日和はレジに並んでいて、もうしばらく時間がかかりそうだ。

 半田君も日和に気付いたのか、苦笑いを浮かべた。

 その半田君の視線がわたしの見ていたマフラーで止まった。

 彼は目を細めた。

「弟さんの誕生日は来週だっけ?」

「何で分かるの?」

「板橋からもうすぐ誕生日と聞いたのと、そう顔に書いてある」
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